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不動産業界におけるAI活用事例!AI導入のメリット・デメリットも解説
こんにちは。「レリーズ」編集部です。
2023年上半期はChatGPTをはじめとする生成AIが大きな話題を呼びました。しかし、生成AIに限らずあらゆる業界でAI活用は進んでおり、アナログ文化が根付いているといわれる不動産業界でも、着実にその波は迫っています。
そこで今回は、2023年9月現在の不動産におけるAI活用について、どこよりも詳しく解説します。業界トレンドについて関心をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
不動産業界におけるAIテクノロジーの活用領域とは?
そもそもAI(人工知能)の定義とは、「人間のような知的なふるまいの一部を、ソフトウェアを用いて人工的に再現したもの」です。つまり、AIは人間のように物事を考え、学べるシステムであるといえます。
2023年現在、AIは大量のデータや経験に基づいて、従来のコンピューターでは不可能だったことを実現可能になりました。さまざまな業界でAI活用が進んでおり、不動産業界も例外ではありません。
例えば、AIポータルメディア「AIsmiley」を運営する株式会社アイスマイリーは建築・不動産のAI導入事例をまとめたカオスマップを2022年7月26日に公開しています。
引用:PR Times「建築・不動産のAI導入事例をまとめたカオスマップを公開」
このように、すでに不動産業界でも至る所でAI活用が進んでいるのです。では、ここからは不動産業界における代表的な導入領域についてみていきましょう。
活用例①:売却価格の査定
従来、不動産の売却額の見積もりのためには、訪問査定が必要でした。しかし、AI技術の導入により、物件の条件に基づいて自動で査定額を出すことも可能になります。
その仕組みは機械学習を用いて、さまざまな不動産情報と売却価格をAIが学習させることで「自動で売却額査定」を算出するというものです。
ただし、AIの精度を上げるためのデータが不足しているのが課題。この点については、「国土交通省が推進している不動産IDの整備が整い、民間との連携が広まれば査定の精度がさらに向上するでしょう。
活用例②:集客・マーケティング
不動産売買仲介における集客・マーケティング業務はとても負担が大きく、「売り出し物件の確認」「ポータルサイトへの出稿」「見込み顧客への継続的な物件提案」など、多くの人的リソースが必要です。
この領域において、AIを活用することで、業務効率につながり、エンドユーザーにも簡単かつスムーズに案内ができるようになるでしょう。
さらに、AIは物件情報を基に自動的に文章生成も可能であるため、マーケティング活動の効率化も図れます。長期化するエンドユーザーへのアプローチとして、その閲覧履歴や希望条件を元にAIで物件をマッチングする追客ツールの活用も有効です。
活用例③:問い合わせ対応
多くの不動産会社は、日々の業務のなかで、エンドユーザーから寄せられた多数の質問・問い合わせに忙殺されているのではないでしょうか。AIを活用したチャットボットを導入すれば、これらの質問に自動で瞬時に回答することが可能となります。
このチャットボット技術のなかには、サイト閲覧中に「質問はこちらから」のようなポップアップで活用されているものもあります。
米OpenAIのChatGPTのような高度な技術の登場により、従来必要だったAQの作成も不要となり、更なる業務効率化が期待されています。
活用例④:セキュリティー担保
AIの進化により、物や人の認識・識別も容易になっています。これにより、例えば賃貸物件の内見を自動化する際に、例えば顔認証システムを使用して鍵の解錠や建物の入場管理が可能に。
この技術の導入で、現場にスタッフを派遣せずとも内見が行えるようになりました。さらに、特定の人物のみの入場を許可することで、防犯性も強化されるなど、エンドユーザー側の利便性も向上しています。
活用例⑤:図面作成・内覧
AI技術は不動産業界の顧客管理にも活用され始め、顧客情報の共有や一括管理が一段と容易になっています。
これらのツールは、データの自動整理や紙ベースの情報をデジタル化する能力を有しており、業務の効率化に貢献しています。不動産業界は残業が多い業界ではありますが、このような自動化技術の更なる普及は、従業員の作業負担軽減に繋がることでしょう。
不動産会社がAIテクノロジーを活用するメリット
不動産業界でAIテクノロジーを活用するメリットとしては、以下のものが存在します。
- 業務効率化を果たせる
- データ活用を加速させられる
- 顧客体験の向上に繋がる
次項より、それぞれ個別にみていきましょう。
業務効率化を果たせる
まず浮かぶメリットとして業務効率化が挙げられます。定型業務や集計、データ管理などを自動化させることで、人件費を大幅に削減できるでしょう。
これまで紙媒体でおこなってきた業務をデジタルに置き換えることで、業務負担も大幅に低減可能。
不動産業界は2020年代以降のマンパワー不足が課題になっており、帝国データバンクによって2019年に公開された調査によると、業態別における社長の平均年齢は、不動産業が61.7歳で調査対象の業種のうち最高で、後継者不在率も68.9%と報告されています。
引用:「不動産ビジョン2030」
このように、労働力不足が深刻な不動産業界で簡単な作業をAIに任せられれば、高度な作業に人を回せるようになります。その結果生産性の向上にも繋がっていくでしょう。
データ活用を加速させられる
AIは、上手に扱えば人間よりもはるかに高い精度で予測や分析が可能です。 例えば、不動産業界が抱える膨大なデータを利用すれば、高精度かつ短時間で査定などが行え、実際にそういった技術を活用したサービスが存在します。
担当者ごとに発生していた”ばらつき”も抑えられ、サービスの均一化も実現可能。
不動産による投資分野では、空室や修繕、老朽化、家賃滞納などあらゆるリスクを少しでも回避するために、AIによるデータ分析が役に立つと考えられます。
顧客体験の向上に繋がる
AI活用をすれば、エンドユーザーにとって、より簡便なサービスを届けられるようにもなります。
さらには前述2つのメリットも合わさり、自社にはリソースの余裕が生まれるでしょう。そのリソースを活用して、さらに付加価値の高いサービスを提供すれば、エンドユーザーの満足度はさらに向上すると考えられます。
関連記事:不動産売買取引では「顧客体験のDX」をどう実現するべきか?
不動産会社がAIテクノロジーを活用する上での課題
では、不動産会社がAIテクノロジーを活用するにあたって、どのような課題があるのでしょうか。代表的なものをピックアップすると、以下のとおり。
- 人材育成が必要になる
- ツールの選定の労力・導入コストがかかる
- 業務フローをアップデートしなければならない
次項より、それぞれ個別にみていきましょう。
人材育成が必要になる
従来、アナログ中心だった不動産業界でのAIの導入は「挑戦的な取り組み」ともいえるかもしれません。不動産業界では「AIにまだ触れたことがない」という方も多く、特に中小企業のベテラン従業員にとって、既存の方法を変更するのは難しさを感じることがあるでしょう。
これに対応するためには、ITに精通した人材の採用や、現行の従業員へのIT研修が不可欠。 今後は「ITに抵抗がない人材を雇用する」「既存の従業員にITについて勉強させるべく研修体制を整備する」ことも重要になってくると予想されます。
関連記事:不動産会社でDX人材は育成すべき?必要な理由や育成方法を紹介
ツールの選定の労力・導入コストがかかる
適切なAIツールを選ぶためには、調査から試用、そして社内の承認まで多くのステップが必要です。さらに、導入の際の初期費用や維持費が発生します。
加えていえば、技術の進化により、AIツールのアップグレードや変更の可能性も考慮すべきでしょう。
このように、検討するべき要素が多いにも関わらず、AI技術関連のサービスがどんどん増えるため、「最新、最適なサービス」を見つけるためのアンテナを日頃から貼っておくことも重要です。
業務フローをアップデートしなければならない
AIツールは便利ですが、現行の業務やチームの環境にフィットしない場合、業務プロセスの再設計が求められるケースも往々にして存在します。
このAIの統合は「不動産DX」、つまりデジタルトランスフォーメーションの一部といえます。こういった企業変革の過程では、情報セキュリティやプライバシーポリシーの見直しも必要となるでしょう。
関連記事:不動産会社のDXは「課題起点」の意識が重要|取り組みの“定石”が存在しないワケ
関連記事:不動産DXで業務フローはどのくらい改善する?デジタルシフト成功のための勘所
AIテクノロジーを使った不動産テックサービス3選
ここからは、AIテクノロジーを使った不動産テックサービスについて、代表的なサービスを以下の3つを紹介します。
- Gate|価格査定を自動化
- SQ-2|人手不足を解消するAI警備ロボット
- Chat管理人|マンション管理を効率化
各サービスの概要について、個別にみていきましょう。なお、不動産テックについては下記の記事でも詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。
関連記事:不動産テックとは?活用するメリットや代表的なサービスについて徹底解説!
Gate|価格査定を自動化
引用:Gate
リーウェイズ株式会社の「Gate」は、最長50年の収益予測や、金融機関と同等の基準に基づいたAI査定機能を持つ投資シミュレーションツールです。2億件の大規模な不動産データを利用して、賃料、利回り、空室率、価格を精緻に査定します。
客観的なデータの提供により、ユーザーの意思決定をサポート。企業内での利用で、査定スキルの均一化や迅速な提案が可能となります。
SQ-2|人手不足を解消するAI警備ロボット
引用:SEQSENSE
SEQSENSE株式会社が開発した自律移動型の警備用ロボット「SEQSENSE」は、自動巡回が可能なAI搭載の警備ロボットです。指定された巡回ポイントに従い、AIが最適なルートで動作。移動中も安全を確保し、リモートでの映像確認や通信が可能です。
丸の内や大手町などのオフィスビル、成田空港・仙台空などの空港施設に導入された実績もあり、ビルメンテナンス業や警備業の人材不足を解決する手段として期待されています。
Chat管理人|マンション管理を効率化
当社GOGEN株式会社の提供する「Chat管理人」は、ChatGPTの高度な言語処理技術を活用し、マンション関連のお問い合わせに対して自動で回答するサービスです。人手が不足しているなかでも、効率的な問い合わせ対応や多言語サポートを実現できます。
関連記事:不動産業界でも注目のChatGPTとは?業務効率化に繋がる使用手順を徹底解説!
不動産会社におけるAI活用の事例
ここからは、不動産業界におけるAI活用の事例を紹介します。
- 野村不動産の「住まいのAI ANSWER」
- 東急リバブルの「AI相性診断」
- オープンハウスグループの「生成AIの実証実験」
以下より、個別にみていきましょう。
野村不動産の「住まいのAI ANSWER」
引用:ノムコム
野村不動産では不動産情報サイト「ノムコム」の新コンテンツとして、人工知能(AI)によるチャット型Q&A サービス「住まいのAI ANSWER」を導入し活用しています。
AI ANSWERはお客様からの不動産に関する疑問に答えたり、購入や売却をサポートするためのサービスです。
AI ANSWERは、購入や売却の疑問から仲介や相場に関する情報まで、多岐にわたる質問に対応。24時間利用可能で、PCやスマートフォンどちらからもアクセスが可能です。面倒な登録やアプリダウンロードは不要で、すぐに利用開始できる点も、特徴として挙げられます。
東急リバブルの「AI相性診断」
引用:東急リバブル
東急リバブルでは、自身の希望条件にマッチする物件をAIが診断する「AI相性診断」を提供しています。
AI相性診断は、物件のタイプ、住人の数、予算、希望エリアなどを選択していくことで、条件に合った物件を紹介してくれる仕組み。エンドユーザーは店舗に行く手間を省き、自宅から気軽に物件探しをスムーズに行えるでしょう。
さらに、東急リバブルではAIを活用したスピード査定サービスも提供しており、一際AI活用を積極的に実施しているといえます。
オープンハウスグループの「生成AIの実証実験」
引用:PR Times「オープンハウスグループ、生成AI活用の実証実験を開始 DX支援企業のアジアクエストが技術アドバイザーとして支援」
株式会社オープンハウスグループは、AIなどのデジタル技術を活用して企業のDXを支援するアジアクエスト株式会社と協力し、生成AIを自社事業に活用するための実証実験を2023年7月に開始しています。
同社によると、以下の事業で生成AIの活用を検討しているとのこと。
- エンドユーザーの住まいへのこだわりを反映し、推奨物件を自動生成する「物件提案サービス」
- 購入検討段階での設計図・物件パース、契約段階での重要事項説明書・契約書などの作成アシスト
- 入居者からの問い合わせに自動回答を行う「仮想オンラインコンシェルジュサービス」
- 同社のメタバース事業戦略子会社がエンドユーザーの要望に応じたアバターを自動生成
上記のような取り組みが本格採用されれば、同社のDXはますます活性化するでしょう。
アメリカ不動産市場におけるAI活用事例
アメリカは「不動産テック先進国」といわれますが、AI関連技術に限ればどうなのでしょうか。
アメリカでは日本以上に住宅市場が盛り上がっており「エンドユーザーの一生における住宅購入回数」は少なくとも3回以上といわれています。AIの出現により、住宅の売買方法は急速に変化しておりZillowやCompassなどの不動産会社が、完璧な住宅ローンの取得、家の売買、住宅融資にAIを採用。
特にAI 対応チャットボットは、顧客データを収集し、見込み顧客の発掘とコンテンツ マーケティングの改善に役立つため、多くの不動産企業や住宅購入者に利益をもたらしています。
その結果、チャットボットは2022 年に市場シェアの28.98%を獲得しているのが現状です。
引用:Mordor Inteligence「CHATBOT MARKET SIZE & SHARE ANALYSIS - GROWTH TRENDS & FORECASTS (2023 - 2028)」
もちろん、これ以外の領域でもAI活用は進んでいますが、日本よりも購入回数が多い住宅市場は、今後の日本市場におけるモデルケースとして注目する価値があるといえるのではないでしょうか。
関連記事:【2023年版】アメリカの不動産テック市場に関する調査と論考|注目の企業はどこ?
「AIと共生する」不動産会社とは?
AI関連で頻繁に議論されるのが「AIの進化によって将来的に不動産仲介の仕事は無くなるかもしれない」というトピックです。
将来的にAIが物件を仲介するようになれば、普通の仲介業者が手数料を得ることは難しくなる可能性があるため、ある意味では間違いとも言い切れません。
取り扱える物件の量もデータの精度も、AIのほうが人間よりもはるかに上。 エンドユーザーにとっても、不動産業者に相談するよりもAIに仲介してもらったほうが有利な取引をできる局面も発生するでしょう。
AIは人間と違って24時間365日休みなしで働いてくれるため、人間の業者に取って代われるともいわれています。
そのような将来像は避けられるものでもありません。しかし、大切なのは「煩雑な業務はAIに任せつつ、人間はより高付加価値なことに専念する」という意識ではないでしょうか。
今後の人手不足も鑑みると、AI活用による業務負担の削減は不可欠であるといえます。
そのなかで「AIで、ただ楽をする」のではなく、エンドユーザーに対しより高い体験価値を届けていくことこそ、真に「AIと共生する」と定義できるはずです。
そのような未来を実現するため、当社GOGEN株式会社も、業界内におけるAI活用をより活性化させるための取り組みを行っています。その一環が、不動産テック協会のAI活用推進部会への参画です。
引用:PR Times「【7/6(木)開催】2023年第1回AI活用推進部会イベントにアルサーガパートナーズCEO/CTO 小俣泰明が登壇」
AI活用という大きなトピックは、個社ごとの議論ではなかなか「ベストプラクティス」を見つけにくいという事情があります。
そのため、各社が連携をとりつつ、より良い「AI活用のあり方」を模索していく必要があるのではないでしょうか。
まとめ
不動産業界は、AIテクノロジーの導入によって、劇的な変革を迎えています。AIの能力により、大量の物件データや市場トレンドを高速に分析し、購入者や投資家に最適な物件を提案できるようになりました。
このようなAIテクノロジーの活用は、不動産業界において効率化、高精度化、そして新しいビジネスモデルの創出を促進しており、今後の市場の主要な競争要因となることが予想されます。
当社は不動産売買特化型のDXXプラットフォーム「レリーズプラットフォーム」を提供しています。
レリーズは不動産取引実務の効率化やコストカットが可能なサービスです。DX推進による顧客体験価値や満足度の向上を図りたいとお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。
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