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不動産テック「クラウドファンディング」とは?不動産会社の活用方法についての論考
こんにちは。「レリーズ」編集部です。
2023年現在、不動産投資の新しい手法として注目が集まっているのが不動産クラウドファンディングです。従来型の不動産投資とは異なり、少額からでも投資可能なスキームの普及により、個人での不動産投資がより活性化しているといえるでしょう。
今回は、不動産テックの1つ、不動産クラウドファンディングについて、不動産会社でも知っておくべきことを解説します。今後の各社における事業の広がりについて考えるためのいち材料として、ぜひお役立てください。
不動産クラウドファンディングとは?
近年話題になっている不動産テックにはさまざまなカテゴリーがあり、そのなかの1つに「クラウドファウンディング」領域が存在します。
不動産クラウドファンディングのサービスは「個人を中心とした投資者からWeb上のプラットフォームで資金を集め、投融資を行う」という仕組み。不動産事業を目的とした需要者と投資家をマッチングさせるといった活用が行われているのが特徴です。
不動産クラウドファンディングは、インターネットを通じて投資家から資金を集め、不動産を賃貸ないしは購入する。その上で、賃貸料のような「インカムゲイン」や売買益のような「キャピタルゲイン」を投資家へと分配する不動産投資手法です。
不動産クラウドファンディングの市場規模は拡大傾向にあり、LIFULL 不動産クラウドファンディングで公開されている情報を参照すると、2022年の年間募集総額は500億円を超えるとのこと。
引用:LIFULL 不動産クラウドファンディング「不動産クラウドファンディングとは?」
なお、不動産テック協会が公開している不動産テックカオスマップでは、第8版までは、不動産クラウドファウンディングも1カテゴリーとして換算されていました。
しかし、2023年8月30日に公開された第9版では、カテゴリー外になっています。理由としては、需要の広がりと、新規企業の参入障壁が低くなったことも要因と考えられるでしょう。
不動産特定共同事業法の改正は何をもたらしたのか?
2017年3月に「不動産特定事業法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、同年6月に公布、12月1日に施行されました。
2019年4月には、政府による「未来投資戦略2018」を踏まえた、不動産クラウドファンディングを促進するための改正も実施。数万円の自己資金があれば不動産投資を始めることが可能となっています。
ほかにも、以下のような施策が実施されました。
など
2番目の施行規則改正は、個人などによる長期・安定的な不動産クラウドファンディングへの参加を促進することを目的に行われています。
3番目の新設法人の参入要件の見直しについても、クラウドファンディング事業に参画しやすい土壌が整備されたため、市場の健全化に貢献しているといえるでしょう。
不動産クラウドファンディングとJ-REITとの違い
不動産クラウドファンディングと似たシステムとして、J-REIT(リート)が挙げられます。J-REITとは、「Real Estate Investment Trust」の略で、不動産投資信託を指す言葉。
J-REITは投資家から集めた資金を、オフィスビルや商業施設、ホテル、マンションなどの不動産に投資し、収益を投資家に分配するファンド商品です。
J-REITでは不動産クラウドファンディングとは異なり市場価格の変動によって投資家へのリターンが決まります。
ファンドとして複数の不動産に一括で投資することになるため、自分が投資したい不動産に直接投資できるという点でも違いがあります。
投資金額が数万~数十万円からと多少高額になっているため、少額から始めたいエンドユーザーには不動産クラウドファンディングの方が向いているでしょう。
エンドユーザー視点での不動産クラウドファンディングのメリット・デメリット
ここからは、エンドユーザー視点でみた不動産クラウドファンディングのメリットとデメリットについて解説します。
事業者側も、これらの内容を把握しておくことで、エンドユーザーに対する付加価値アップに繋げられるでしょう。
不動産クラウドファンディングのメリット
エンドユーザーが不動産クラウドファンディングを活用するメリットとしては、以下のようなものが考えられます。
- 少額から運用できる
- 手続きが簡単
- 比較的高い利回りに期待できる
本来、不動産投資は通常不動産を購入するためには、最低でも数百万円近い資金が必要。しかし、不動産クラウドファンディングでは数百万円の資金は必要なく、ほとんどの場合1万円あれば不動産投資を始められます。
さらに、エンドユーザーにとって不動産取引は非常にハードルが高いものの、不動産クラウドファンディングは不動産仲介業者と売買契約を結ぶ必要がなく、「ただ投資をするだけ」で利益が狙うことが可能。
そのため、難しい手続きや作業は不要な点から、参入障壁が比較的低いといえるでしょう。
不動産クラウドファンディングではファンドによっても異なりますが、一般的には「6~8%」高い場合では20%を超える利回りを想定されているなど、利回りの高さも、エンドユーザーにとっても魅力に写るであろうポイントです。
不動産クラウドファンディングのデメリット
ただし、エンドユーザー視点では、以下のようなデメリットが不動産クラウドファンディングを使った投資では発生します。
- 配当がもらえない可能性もある
- 流動性に対応できない
不動産クラウドファンディングで投資家に分配される配当は、基本的に家賃収入から得る収益をそれぞれの出資割合に応じて決定します。そのため、不動産クラウドファンディングでは配当金が支払われないリスクがあるのです。
さらに、不動産に出資すると基本的に途中解約できないため、運用している期間中に社会情勢などで損失が出てしまう可能性も懸念されるでしょう。
代表的な不動産クラウドファンディング3選
ここからは、代表的なクラウドファンディングサービス、代表的な以下の3サービスを紹介します。
- COZUCHI(コヅチ)
- REAL (クリアル)
- TECROWD (テクラウド)
それぞれ、個別にみていきましょう。
「COZUCHI(コヅチ)」
引用:COZUCHI
「COZUCHI」では、サービス提供側が厳選した不動産に、インターネットを通じて集まった多数の投資家が不動産の専門家と共に投資を実施するサービス。家賃収入や売却利益をもとに、投資家へ配当するという形態。
投資家視点でみれば、投資後はプロに判断を委ねられるため、参入障壁の引き下げに繋がっているシステムといえます。
「CREAL (クリアル)」
引用:CREAL
2011年に創業したクリアル株式会社は、不動産投資運用プロセスのDXを大胆に推進し、業務効率のアップとリターン向上を目指し、不動産クラウドファンディング「CREAL」を提供しています。
CREALでは厳選した資産価値の高い物件のみが掲載されており、2023年時点で累計154億円調達していますが、配当遅延や元本割れは起こっていません。
案件によって異なりますが、運⽤物件の空室リスクに対する対策としてマスターリース契約を⾏っているため、賃料が保証されるのが特徴です。
「TECROWD (テクラウド)」
引用:TECROWD
TECRA株式会社が運営する「TECROWD」は、大きな特徴として国内不動産だけでなく国外の不動産にも投資できるという点が挙げられます。
特に新興国の不動産を多く扱っています。とはいえ、日本の建築メーカーが工事に携わっているため、投資側は安心できるといえるでしょう。
最低投資金額は10万円と高額ながら過去の投資案件はすべて完売。なかには即日完売する案件も多く、注目を集めています。
想定利回りも高めに設定されており、運用期間も4~30か月と期間が大きく異なっているため、幅広いニーズに対応できるサービスです。
不動産クラウドファンディング事業で進む、完全オンライン対応は「デジタル本人確認」も必須
不動産クラウドファンディングで本人確認を行う際には、犯罪収益移転防止法で規定される「特定事業者」として対応しなければならない点には留意しましょう。
不動産クラウドファンディングは、アナログ文化が根付いている不動産業界でも、とりわけオンライン化が進んでいる領域でもあります。
不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインの策定により、不動産業界でも「デジタル本人確認」「ekyc」「電子契約」が一般化されています。
不動産クラウドファンディングでは、不動産特定共同事業者としての規制を受けると同時に、犯罪収益移転防止法における「特定事業者」としても指定されるため、取引時には「取引時確認」を行わなければなりません。
この取引時確認の一つとして、「本人特定事項」、すなわち「本人確認」の実施が含まれています。
本人確認といえば「対面での身分証明証の提示」といったように、アナログなイメージがあると思われますが、不動産業界では本人確認の非対面・オンライン化が進んでいます。
2018年11月公布の改正犯収法をきっかけに、昨今では非対面による本人確認、いわゆる「eKYC」の実施も増加傾向にあるのです。
不動産クラウドファンディングは、基本的には契約締結含めてオンライン上でのやりとりが前提。必然的に、本人確認の実施もeKYCによるものが主流となっているといえるでしょう。
こういった状況下で、活用による恩恵が大きいソリューションとして「デジタル本人確認」が挙げられます。
デジタル本人確認とは?
デジタル本人確認とは、「オンライン上での本人確認」をより安全に完結するためのサービスです。
不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインの策定により、不動産業界でも「デジタル本人確認」「ekyc」「電子契約」が一般化されています。
2023年7月時点での予定では「2024年度中に保険証、運転免許証もマイナンバーに統合されたマイナンバーが普及する」段取りとなっており、今後はデジタルベースでの本人確認が広まっていくでしょう。
当ブログを運営するGOGEN株式会社も、前述の株式会社TRUSTDOCKと2022年3月9日より業務提携を締結しており、2023年5月に「レリーズ本人確認」をリリースしました。本人確認の即時的なデータ化により、反社チェックもスムーズになるサービスです。
不動産業界におけるデジタル本人確認については、下記の記事で詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。
関連記事:不動産取引で「本人確認のデジタル化」は可能?eKYCや犯罪収益移転防止法について徹底解説!
不動産クラウドファンディングで本人確認システムを導入するメリット
不動産クラウドファンディングで本人確認システムを使えば、以下のようなメリットがあります。
- 顧客満足度の向上
- 業務効率化
ユーザーである投資家にとっては、これまで必須だった自宅での郵送物の受け取りが不要になり、本人確認に要する時間を大幅に短縮可能。そのため、投資回転スピードが上がり満足度が上昇すると想定されるでしょう。
クラウドファンディングの提供企業側からしてみれば、ekycの導入が一般的となるため、お客様側で本人確認をしてもらえ、本人確認業務への業務コストを割く必要もなくなります。
不動産クラウドファンディング事業で有効なその他のテックサービス
銀行融資などの従来型の資金調達に「適さない」不動産に対する資金調達手法として、クラウドファンディングは期待されています。
しかし、クラウドファンディングへ投資するエンドユーザーの中には、不動産のリスクを認識せずに、銀行預金と同じ感覚で投資している可能性もあるため、事業者側のサポートが必要。
そこで、不動産テックの「不動産情報サービス」「価格可視化・査定サービス」を使えば、クラウドファンディング用不動産の「目利き」という新たな付加価値を、不動産会社としても提供していけるのではないでしょうか。
以下より、それぞれのシステムについて概要を解説します。
「不動産情報」サービス
「不動産情報」系のテックサービスは、物件情報を除く不動産関連のデータを提供・分析するためのシステム群です。
不動産売買ビジネスでは、日常的に市場調査・価格相場の把握のためにレインズのデータを利用しています。
しかし、インターネット上に存在する不動産情報や紙広告の不動産流通履歴などが蓄積された「不動産データサイト」を活用すれば、クラウドファンディングを利用するユーザーに向けて価格査定・提案を行うことが可能。
例えば、市場に出ている不動産データを取り扱う「不動産データクラウド」が挙げられます。
引用:不動産データクラウド
不動産データクラウドでは、市場に出ている不動産の「取引事例」「売出・販売終了(成約含む)事例」を網羅。物件調査の際に「短時間でスムーズに物件価値を参照する」ためのサービスです。
「価格可視化・査定」サービス
「価格可視化・査定」は、データ活用を通して不動産価格や賃料の査定、その将来見通しなどを行うシステム・ツールです。
価格可視化・査定のテック系サービスの例として、リーウェイズ株式会社の「Gate(投資向け)」をみてみましょう。
引用:Gate(投資向け)
Gateは、2億件の不動産ビッグデータを用いて、賃料や利回り、空室率、価格を現在から50年先まで高精度に査定するシステムです。
AI査定や周辺事例などの客観的な情報を提案に活用することで、エンドユーザーの決断を促進するサービスで、クラウドファンディング用不動産の査定でも効果を発揮するでしょう。
まとめ
不動産クラウドファンディングは、多くの個人投資家が少額から投資を始められる手段として、2023年現在は広く普及しています。不動産プロジェクトの資金調達をデジタル化し、より多くのエンドユーザーに投資機会を提供することで、不動産業界に新しい風をもたらしているといえるでしょう。
不動産会社にとっても、新たな資金調達の手段だけでなく、外部ステークホルダーとの繋がりを強化する手段として、大いに役立つ可能性があります。
当社は不動産売買特化型のDXXプラットフォーム「レリーズプラットフォーム」を提供しています。
レリーズは不動産取引実務の効率化やコストカットが可能なサービスです。DX推進による顧客体験価値や満足度の向上を図りたいとお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。
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