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不動産DXで業務フローはどのくらい改善する?デジタルシフト成功のための勘所
こんにちは。「レリーズ」編集部です。
不動産業界でも、大手を筆頭にDXの波が押し寄せつつあります。しかし、業務全体をいきなりデジタルシフトさせるのは非効率であるため、DX成功のためにはポイントを絞ったテクノロジーの活用が必要です。
今回の記事では、不動産会社がDXを図るうえで“肝の部分”となる「DXの業務フロー上のメリット」を解説します。「DXで何を、どう変えるべきか」について知りたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
不動産会社DXの現状
そもそもDXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン氏によって提唱されました。定義としては「進化し続けるテクノロジーで、人々の生活を豊かにすること」ですが、不動産会社視点でみれば、「テクノロジーで企業の事業活動をより良くすること」といえるでしょう。
DXに向けた取り組みは不動産業界でも徐々に浸透しつつあります。不動産テック企業7社と不動産テック協会が実施した「不動産業界におけるDX推進状況」の調査を参照すると、6割以上の企業が、DXに対する取り組みを何かしら行っていると判明しています。
さらに、90%以上の不動産会社が「業務効率化」「生産性向上」の恩恵も実感しているとわかります。
引用:PR Times「2022年、不動産DX『推進すべきだと思う』が98.4% 「DXの効果を実感」は70.7%、最も導入を検討されているのは『電子契約システム』」
つまり、事実として不動産会社がDXを成功させれば、業務フローはより改善されるといえるでしょう。
DXと「不動産テック」の違いは?
近年、不動産業界で話題になっているトピックに「不動産テック」があげられます。
不動産DXと混同されがちかもしれませんが、不動産テックはテクノロジーの力によって、不動産業界の課題や商習慣を変えるための「手段」のことであり、DXは変革という「手段」「取り組み」といえます。
不動産業界では、テック技術の導入自体はある程度進んでいますが、DX化まではほど遠いのが現状です。「業務フローごとにマッチするテック(例:電子契約システムや顧客管理システムなど)は入れたものの、各ツールが分断されているため、かえって業務フローが複雑になった」といったというケースは多々あることでしょう。
つまり、業務フローにおける“自動化自体”は実現できるものの、手間が増えているため、業界全体としてDXにネガティブなイメージがあるのです。
そもそも、DXは「トランスフォーメーション(変革)」というくらいですから、全社的な業務体制の再定義が求められます。事業規模に関わらず、大切なのはシステム同士の繋ぎ込みであり、これを果たすことこそ「DXの実現」と定義できます。
不動産DXの業務フロー上のメリットとは?
不動産会社がDXに向けた取り組みを進めれば、さまざまな恩恵が得られます。代表的なメリットとしては、以下のようなものがあげられるでしょう。
- 各業務のオンライン/自動化
- マンパワーの削減
- 新たな価値の創出
上記について、個別に解説します。
各業務のオンライン/自動化
不動産業界における業務フローの慣習は、長年の積み重ねによって形成され、その文化が今でも根強く残っています。そのため、未だにデジタル化されていない業務も多々存在するのです。
具体的には「売買・賃貸物件の契約手続き」「電話・FAX」「紙の書類・資料」など。アナログなやりとりは頻繁に発生しています。
しかし、DXを果たせば不動産ビジネスにおける各業務をオンラインで実施。あるいは自動化できるでしょう。例えば、以下のような業務です。
このように、各業務でデジタルシフトを果たしていけば、全体の業務フローそのものが大きく改善されるはずです。
マンパワーの削減
不動産業界の多くの業務は、担当者のスキルに頼っており、属人化しているといえます。DXの取り組みを推し進めれば、その状態からも脱却できるでしょう。
特に、不動産の価格査定などの業務では、個人に高いスキルが求められており、社内での情報共有は薄かったのが実情。DXを取り入れることができれば、属人化している業務をメンバー間で共有でき、改善できる可能性が高まります。
これまで多くの時間を取られていた引き継ぎ業務についても、DX推進によって情報共有を容易に行えるようになります。
新たな価値の創出
DXは、業務フローを「ただ効率的にする」だけではありません。多様化する顧客ニーズに対応し、新たな価値創出につなげられるというメリットもあります。例えば、電子契約やVRによるオンライン内見を活用すれば、商圏外の見込み客にアプローチすることも可能。
他にも、AIやビッグデータを活用することで、「物件価格」「競合他社」「エンドユーザー」の動向を定量的かつ客観的に把握することができ、よりミクロな商圏におけるビジネスチャンスの創出にもつなげられるでしょう。
前述のとおり、マンパワーも削減できますので、浮いたリソースでより顧客満足度を向上させるビジネス体系を再定義することが可能です。
社内スタッフに向けて「テレワークの選択」を提案できるようになれば、働き方にもつながり、人手不足解消の対策だけでなく、子育て世代の復職も促せます。
DXにより業務フロー改善に成功した不動産会社の事例
ここからは、不動産業界で業務フローの改善を進めていくうえで役立つDX事例をみていきましょう。大々的な取り組みを行っている企業としては、以下が代表的です。
- 三井不動産
- 株式会社長谷工コーポレーション
- 野村不動産
各社が行っている取り組みの詳細について、個別に解説します。
DXの推進により業務フローを大幅に改善した「三井不動産」
財閥系「三井御三家」の1つに数えられ、不動産業界では最大手の1社である三井不動産株式会社は、業界内でも特にDX推進に力を入れています。
DXに向けた積極性は、同社が公開している「DX白書」に記載された変革の方針や推進体制などからも明らかです。
同資料によると、三井不動産は社内にDX専門の部署を設けて、全社的にDX推進に取り組んでいるとのこと。システム刷新による業務効率化時間が「27万時間/年、約138人分」であったと報告されていることから、業務フローを大幅にスリム化したことがわかります。
引用:三井不動産株式会社「DX白書2022」
そのなかでも、特に「決裁・会計システムの刷新」によって会計業務にもたらされた改善事例が印象的です。
同社は、決済にかかる業務フローと会計フロントを統合することにより「受発注」「会計業務」に関わる業務を約35%も削減することに成功したとのこと。
引用:三井不動産株式会社「DX白書2022」
さらに、三井不動産はRPAツールやローコードツールも導入した結果、累計1万9,365時間もの業務時間を削減できたと報告されています。
引用:三井不動産株式会社「DX白書2022」
この事例は、三井不動産ほどの規模感があるからこそとの意見もあるかもしれませんが、DXが業務フローにもたらす恩恵の潜在的なポテンシャルを推し量る材料になるでしょう。
入居者情報を活用し付加価値のアップに繋げた「株式会社長谷工コーポレーション」
数多くのマンションの設計や施工、管理を行っている株式会社長谷工コーポレーションも、業界内でのDX事例で、頻繁に名前が挙がる企業です。
同社がDXに取り組み始めたのは、日本にDXという言葉自体が浸透しきっていなかった2009年にまで遡ります。
以来、デジタルツールの活用を続けてきた長谷工コーポレーションは、2020年にDX施策の立役者であった池上一夫氏が新社長に就任すると、更に加速・就任と同時に「DX推進室」を設置し、全社的なDXを進めました。
長谷工が取り組む事例で印象的なものとしては、3次元で建物をデジタルモデル化する自社開発の「BIM」システムを利用した「LIM(Living Information Modeling)」が挙げられます。
引用:長谷工コーポレーション「Living Information Modeling」
LIMは物件各所にセンサーを設置して、マンションに入居者が住み始めてからの「建物の状態」「設備の利用状況」「人の動き」といった、“暮らしに関する情報”を収集・分析する仕組み。
マンション管理の際に「点検や修繕のデータ」「エレベーターや自動ドアの稼働データ」などの情報を参照すれば、より物件購入者の満足度アップにつながるに満足してもらえるサービス・商品の創出につなげられます。
LIMでは、単にデータを収集・分析するだけでなく、振動センサーや気象センサーも設置されているため、地震や災害時には自動で避難経路の指示や防災倉庫の開放などを行うことが可能。
不動産会社としても、建築業界でこういった取り組みが進めば「物件の付加価値の向上による市場の盛り上がり」「管理業務の負担削減」といったメリットがあるでしょう。
9ヵ年の中長期計画で約1,300億円のDX投資を計画している「野村不動産」
業界大手の野村不動産グループでは、中長期経営計画の9ヵ年でDX・ICTへの投資について、総額1,300億円を計画しています。
野村不動産グループのDX戦略の目的は「価値創造の考え方・手法の進化・変革のため」とされており、「AIによるチャット型Q&Aサービス」「3Dウォークスルー動画」など、デジタルテクノロジーを活用したサービス開発に取り組んできました。
引用:野村不動産グループ 「成長戦略(事業・サステナビリティ・DX)」
その一環として、2022年には野村不動産ソリューションズと当社(GOGEN株式会社)は業務提携を締結しています。
当社が提供する「レリーズプラットフォーム」も不動産流通取引に変革をもたらすためのソリューションであり「デジタル技術との融合による新たな不動産売買体験の創出」という命題があります。
このように、大手とベンチャーが関係構築を行い、改革を図っていく取り組みは業界内のDX推進に寄与するものであり、今後は類似する事例も増えていくのではないでしょうか。
不動産DXで業務フローを改善するためには何が必要?
DXによる業務フロー改善の取り組みは「大手不動産会社にしか実現できない」ことでは決してありません。大手は確かに資金力や人材が豊富ですが、中小の不動産会社には「業務フローや社内規定を柔軟に変更しやすい」という点に強みがあります。
中小の不動産会社でも、インターネット経由で必要機能を利用するSaaS型のシステムなどを導入すれば、導入コストやサーバー管理費などの負担なく、スモールにDXに向けた取り組みを始められるでしょう。
DXの目的は、ITツールやデータを使いこなして、新たな価値を生み出すこと。そのため、各社の課題に即して「できることから始める」意識が大切です。
ただし、DXが「現状業務の否定」にならないようにも注意しましょう。DXのような取り組みは、自社がこれまで従事してこなかった新規領域への「探索」になります。
しかし、事業を進めていくうえでは、既存業務の「深化」を維持することも大切。DXを成功させるためには、これらが両立した「両利き」状態が求められるのです。
両利きスタイルのDX推進体制については、三井不動産も取り組んでいることからも、その重要性が伺えるでしょう。
引用:三井不動産株式会社「DX白書2022」
加えていえば、「DX担当者、推進者を決める」「会社全体でIT理解度を高める」というDX人材の育成は、あらゆる事業規模の不動産会社で必要です。
DXには成功のためのセオリーも方程式も存在せず、試行錯誤が求められますので、既存領域と並行しつつ「小さなスタート」を切っていきましょう。
まとめ
アナログ文化が根強く残る不動産業界においては、労働力不足を解消するためのDXによる業務フローの改善が喫緊の課題となっています。しかし、全社的な「変革」を進める必要があるDXを成功させるためには、「ただツールを導入するだけ」では不十分です。
大切なのは、自社の課題に沿ってデジタル技術の活用領域を見極めつつ、既存業務と両立できるスモールスタートを切ることだといえるでしょう。
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