COLUMNお役立ち情報
不動産IDとは?国土交通省のガイドラインや必要な理由を解説
こんにちは。「レリーズ」編集部です。
我が国において、不動産を管理する際のIDは長らく存在せず、不動産関連情報の管理業務の弊害となっていました。
現在は、2021年にはデジタル関連改革法が制定されたことで、官民で不動産関連情報のデジタル化が図られています。そのような状況下で、国土交通省が主体となって進められているのが不動産IDの普及による物件情報の管理体制です。
今回は、そのような不動産IDの基本的知識について解説します。今後の不動産業界における活用可能性についても論考しますので、ぜひお役立てください。
不動産IDとは
不動産IDとは、国内にある全ての不動産に識別番号を与えるIDのことで、国土交通省主導で進められている政策です。
国土交通省の定義としては、以下のとおり。
“「不動産ID」は、不動産を一意に特定する、各不動産の共通コードです。不動産IDによって、住所の表記ゆれや同一住所・地番に複数の建物がある場合も含め、一義的に不動産を特定できます”
引用:国土交通省「不動産の共通コードとしての「不動産ID」のルールを整備!~不動産IDルール検討会の中間とりまとめを踏まえ、「不動産IDルールガイドライン」を策定~」
不動産IDは不動産業界だけでなく、物流業界や行政などでも活用が期待されていることが特徴。
例えば、不動産共通IDを用いることで「物件の種類分けを行い、それらのデータをもとに自社のリストアップに活かす」といった活用が考えられます。
引用:国土交通省「不動産の共通コードとしての「不動産ID」のルールを整備!~不動産IDルール検討会の中間とりまとめを踏まえ、「不動産IDルールガイドライン」を策定~」
このような特徴を持つ不動産IDは、以下のような表記ルールが設けられています。
<不動産IDのルール>
- IDは、不動産登記簿の不動産番号(13桁)と特定コード(4桁)で構成される17桁の番号。
- 不動産番号のみで対象不動産を特定できない場合に、一定のルールに基づいて、特定コードに個別の符号を入力。
上記ルールは不動産会社には直接的な関わりのないものではありますが、自社で活用する際、記入ミスを防ぐためにも把握しておきましょう。
「不動産オープンID」とはどう違う?
不動産IDと混同されがちな仕組みとして「不動産オープンID」が挙げられます。不動産オープンIDは、一般社団法人不動産テック協会などが作成した共通IDで、国土交通省のものとは別物。
不動産オープンIDも表記ゆれが起こりかねない不動産情報に対して、共通のIDを付与するための技術です。かつては「不動産共通ID」という名称でしたが、国土交通省の不動産IDとの混同を避ける意図から2022年6月に改名されました。
国土交通省の不動産IDは「地番」をベースにしているのに対し、不動産オープンIDは「住所」を基にしている点で異なります。
引用:一般社団法人不動産テック協会「不動産オープンID」
不動産ID普及の課題として「法務省管理の登記簿謄本は、国土交通省がコントロールできない」というものがありました。
そのため、かねてより法務省の「登記所備付地図」などの電子データを、「G空間情報センター」で公開する試みが進んでいます。
つまり、登記簿謄本の表題部まで公開されるようになれば、地番と住所が紐づけられ「不動産ID⇄不動産オープンID」の相互連携が実現するということです。
両IDの連携が実現すれば、不動産業界における物件情報の管理は、より簡便なものになるでしょう。
「レインズ」との違い
不動産業界には、従来から不動産管理システム「REINS(レインズ)」が存在しています。レインズは「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の略称であり、不動産売買取引における貴重な情報源として広く使われてきました。
ただし、一般的な売買契約の場合は登録義務がなく、不動産流通量全体に対して10%程度しか登録されていないのが実情。さらに、データ項目も少なく、情報が反映されるまでに時間がかかってしまうというデメリットがありました。
不動産売買のための「物件リスト」としては機能しているものの、データを集約・蓄積する機能はないことから、実務における使い勝手は決してよくはないのです。
一方で、不動産IDが整備されれば「デベロッパーの持つ図面データ」「管理会社のメンテナンスデータ」「仲介業者の履歴」なども含めて、多くの情報を一括管理できるようになります。
売買取引における情報収集も、よりスムーズに行えるようになるでしょう。
不動産IDが必要とされる背景
不動産共通IDが必要とされる背景には「物件情報の不統一」が挙げられます。
例えば、「◯◯ レジデンス」という名称の物件があったとします。この物件情報を登録する際、「◯◯ residence」と英語で登録されれば、同一物件の特定が難しくなるという問題が発生する点が、かねてより課題の1つでした。
不動産IDはまさにこのような問題を解決するための技術であり、物件の“マイナンバー的な役割”を果たすことで、データ連携が円滑に行えるようにするという意図があります。
散らばっている情報を収集するためには、不動産ごとに共通の識別コードが必要であり、その役割を果たすのが不動産IDなのです。
不動産ID普及によるメリット
国土交通省では、不動産IDの活用用途として、下記の9点を挙げています。
- 自社データベース内や、自社データベースと外部から取得したデータの連携の際の、物件情報の名寄せ・紐付けの容易化
- 不動産情報サイトにおける、同一物件であることが分かりにくい形の重複掲載、おとり物件の排除
- 過去の取引時データの再利用による各種入力負担軽減
- 成約価格の推移の把握による価格査定の精度向上
- 住宅履歴情報との連携によるリフォーム履歴等の把握
- 電気・ガス・水道等の生活インフラ情報に関する、事業者間や自治体等との情報提供・交換の効率化および各種情報の統合管理
- (行政の保有するデータへの紐付けが行われた場合)行政保有情報の照会の容易化・効率化
- (最新の都市計画・ハザードマップ情報等がオープンデータ化され、公的図面として扱われるような環境が整備された場合) 都市計画情報・ハザードマップ等との連携による、調査負担の軽減や重要事項説明書の作成負担等の軽減
- 高精度のAI査定など、多様なエリア情報等のビッグデータの活用による新たな不動産関連サービスの創出
引用:国土交通省「不動産の共通コードとしての「不動産ID」のルールを整備!~不動産IDルール検討会の中間とりまとめを踏まえ、「不動産IDルールガイドライン」を策定~」
不動産売買契約を実施する際には、現状はアナログな方法で情報収集するのが一般的。しかし、不動産IDが広がれば、情報をスピーディに集められるようになります。
加えて「電気やガス、水道、通信などの生活インフラ」「まちづくり、物流分野などのより広い領域」における活用も期待されています。
このような役割が想定されている不動産IDですが、不動産会社・エンドユーザーそれぞれの視点から、具体的にどういったメリットがあるのかをみていきましょう。
不動産会社のメリット
不動産IDによって情報が紐付けされれば、物件情報の収集や名寄せにかかる負担を大幅に削減できます。
不動産業界ではまだまだアナログな商習慣が根付いているのが現状。不動産には「地番」「住居表示」という2種類の標識が存在し、地番と住居表示は必ずしも一致しないことが多く、場所の特定までに時間がかかるケースも珍しくありません。
場所を特定した後も、水道やガス、下水といったインフラ関連の調査にも、以下のように別々の期間がデータを保有していることから時間が必要。
- 上水道…都道府県が管轄している広域事務所
- 下水道…市区町村
- ガス…民間会社
都市計画情報も、ホームページで公開していない自治体もあるため、物件に応じて個別の対応をすることが求められます。
基礎的な情報収集はどの会社がやっても結果は同じではありますが、実は各社ともかなり手間がかかっており「基礎調査における労働生産性は低い」と感じている方は多くいらっしゃるのではないでしょう。
そのような状況下で、不動産IDによって不動産の基本情報が“一括で”わかるようになれば、不動産会社にとって情報収集の正確性・速度がアップするはずです。
エンドユーザーのメリット
エンドユーザー視点でみても、不動産IDの普及は「おとり物件の減少に繋がり得る」というメリットがあります。
現状は、条件の良い物件をみて問い合わせをしたとしても、「今しがた成約になってしまった」などの理由で、別の物件を紹介されたという話も聞かれます。
しかし、不動産IDが活用されれば、物件情報の重複が無くなることにより「架空の物件情報が掲載される」「同じ物件の情報が複数掲載されている」といったおとり広告も減ることでしょう。
物件検索ポータルサイトで不動産IDを活用し、タイムリーに成約情報が更新できるようになれば、リアルタイムに更新されるため、不動産情報が探しやすくなるとも考えられます。
このようにして、エンドユーザーの体験価値が向上していけば、不動産流通はより活性化し、長期目線で業界全体が恩恵を受けられるといえます。
不動産IDの懸念点
一方で、不動産IDには以下のような懸念点もあります。
- 個人情報保護法との関係
- IDの入力・登録に際しての留意点
- IDと紐付けたデータの利用
- IDやIDと紐付いたデータの利用範囲
不動産IDは、単体では個人情報を識別できないようになっていますが「住所・地番」と同じ性質を持ることから、不動産登記簿と照合すれば所有者が特定できてしまう恐れがあるのです。
そのため、本格的に運用して行く段階では、個人情報保護法との整理が必要になることでしょう。
例えば、土地と住宅を合わせて販売するケースなどでは、複数の不動産IDを入力する可能性も考えられます。その場合「どのIDを使うのか」について明確化しておかなければならないといえます。
今後、不動産IDはどのような活用ができる?
ここからは、具体的に不動産会社はどのように不動産IDを活用できるのかについてみていきましょう。大きくは、下記の2点が考えられます。
- ①:自社内での情報管理
- ②:ポータルサイトでの活用
次項より、個別に解説します。
①:自社内での情報管理
引用:国土交通省「不動産IDルール検討会 中間とりまとめ」
社内データベースにおける物件情報の管理を不動産IDにより行えば「データベース内の情報検索の精度向上」「外部から新たに入手した物件情報の名寄せにかかる手間の軽減」などが期待できます。
現状は、物件情報の検索の際に「住所の表記ゆれが怒る」「同一地番上に複数の物件がある」といった問題が発生しますが、それも解消されるでしょう。
さらに、部署間や関連会社間で異なるアクセスキーを用いて管理されていると、情報交換に手間・時間がかかってしまいます。不動産IDが普及し、活用できるようになればその時間も削減されると予想されます。
②:ポータルサイトでの活用
引用:国土交通省「不動産IDルール検討会 中間とりまとめ」
LIFULL HOME’SやSUUMOなどのポータルサイトにおける物件管理で不動産IDを活用すれば、不動産事業者やエンドユーザーの利便性をさらに向上させられるでしょう。
不動産IDがあれば物件を一意的に特定することができるようになるため、過去の取引情報のを参照する際にも、同一物件の情報を“まとめて”引き出せます。
さらには、IDをアクセスキーとして「過去の登録情報を呼び出して入力を補助する機能を実装できるシステム」が開発されれば、過去に自社で取り扱ったことのない物件であっても、過去の入力データを参照できるようになります。
まとめ
不動産IDが整備され、普及されれば、業務過多な不動産売買取引の領域においても、スムーズな物件情報の検索が可能になるため、エンドユーザー・不動産の双方にとって恩恵のある構想といえます。
当社は不動産売買特化型のDXXプラットフォーム「レリーズプラットフォーム」を提供しています。
レリーズは不動産取引実務の効率化やコストカットが可能なサービスです。DX推進による顧客体験価値や満足度の向上を図りたいとお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。
「レリーズプラットフォームの資料請求(無料)」はこちら
- 電子契約をまずは安く使い始めて最大限の成果を求めたい方
- セキュリティを守りながら使いやすい製品を探している方