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【2023年版】アメリカの不動産テック市場に関する調査と論考|注目の企業はどこ?
こんにちは。「レリーズ」編集部です。
昨今の不動産業界ではデジタル技術を活用した「不動産テック」がたびたび話題になります。アメリカは、そんな不動産テック市場がいち早く盛り上がり、さまざまな企業によるサービス創出が発生してる国です。
本稿は、アメリカにおける不動産テックの現状を解説し、日本企業にとって参考になるポイントを論考します。
そもそもアメリカの不動産市場の特徴とは?日本市場との違いは?
そもそもアメリカの不動産市場は構造から日本市場とは大きく異なり、特に「エンドユーザーの一生における住宅購入回数」に差が顕著。日本は平均1〜2回程度であるのに対し、アメリカは少なくとも3回以上といわれており、中古住宅の取引が盛んに行われています。
日本のエンドユーザーは住宅売買の回数も少ないため、仲介会社選びでも「会社のブランド力・知名度」を重視しますが、アメリカでは自分・周囲での売買事例が多いため「リピート利用や紹介」が決定要因になることも珍しくありません。
さらに、日本では仲介会社が顧客を抱えていますが、アメリカでは「各エージェント」がその役割を担っている点も特徴です。
アメリカの不動産テック市場(ReTeck)の現状
不動産テックは、「不動産 × テクノロジー」を組み合わせた用語ですが、アメリカでは、「Re Tech(リーテック)」「Proptech(プロップテック)」などと呼ばれます。
Re Techは「Real Estate」のかけ合わせであり、Proptechは資産を意味する「Property」に由来する用語です。本稿では、混乱を避けるために「不動産テック」で統一して解説します。
アメリカは“不動産テック先進国”といわれるだけあり市場が非常に盛り上がっており、英Unissuが公開している「Real Estate Technology」を、2019年時点で「人口100万人あたりに約6社」の不動産テック関連の企業が存在するとのこと。
同調査では、不動産テック企業が参入している領域は以下の内訳で紹介されています。
- 住宅部門(residential sector)…60.04%
- 商業部門(commercial sector)…49.84%
- 小売部門(retail)…11.50%
この結果の要因としては、前述したようにアメリカでは中古住宅の商取引が盛んである点も一因としてあるでしょう。膨大な人口を抱えるアメリカで、多くの人が人生のどこかのタイミングで、住宅の賃貸や購入を行っているため、市場ボリュームが非常に大きいのです。
加えて、アメリカは今後数年間の経済成長が鈍化すると予測されていますので、その点も住宅市場の健全性に影響を与え、さらにテック系企業の参入数も増加するかもしれません。
なお、アメリカの不動産テック企業は69.37%がBtoB領域でサービスを提供していて、BtoC領域は26.85になっているとのことです。
引用:Unissu「Real Estate Technology (ReTech) And PropTech In The USA - Overview」
アメリカの不動産エージェントは「成果をあげなければ収入ゼロ」という切実な事情もありますので、業務効率化を実現し、成約確率をアップさせるための不動産テック活用の需要が大きいのでしょう。
2018年の時点で、世界の不動産テックへの投資総額は約5,000億円を超えると見込まれていましたが、この投資総額の50%以上はアメリカのスタートアップ企業が有しているといわれています。
現に、アメリカではさまざまな不動産テック系のスタートアップが乱立しており、各領域でサービスが細分化されています。
引用:Medium「【最新版】アメリカ不動産テック カオスマップ」
なお、日本の不動産テック市場については下記の記事でもより詳しく解説しています。こちらも合わせてご一読ください。
関連記事:不動産テックとは?活用するメリットや代表的なサービスについて徹底解説!
特に注目を集める「iBuyer」領域
アメリカでは、買い手探しの前に、売却希望者から物件を買い取り、その後で転売する「iBuyer」と呼ばれるビジネスモデルが盛んに実施されています。
通常、平均2ヶ月以上はかかる売却期間を最小限なものにし、売り手側の「なるべく早く売り切りたい」というニーズに応える形のビジネスです。
引用:GMO賃貸DX「【専門家インタビュー】市川 紘様|アメリカの不動産テック事情からみる、日本の不動産業界のゆくえ」
売り手側からすると、従来は多くの時間が必要だった売却活動でiBuyerを利用すれば、最短2日程度での売却も可能。
前述のとおり、アメリカの不動産テック市場はBtoC向けの領域は開発が遅れていたという背景もあり、iBuyerは急速な広がりを見せ、一大産業となっているのです。
不動産会社視点で見ても、契約手続き全体にかかるリードタイムを大幅に短縮する恩恵は大きいでしょう。
アメリカ不動産テック市場で存在感を増している「ZORC」
ZORCとは「不動産テック版のGAFA」とも呼ばれるアメリカの大手不動産テックを指す総称で、具体的には以下の4つが該当します。
- Zillow
- Opendoor
- Redfin
- Compass
各企業の特徴について、以下より個別に概説します。
Zillow
引用:Zillow
アメリカの不動産情報サイトでは最大手といわれている「Zillow」は、2006年の設立から積極的なM&Aを繰り返し、成長してきました。
2014年には米Trulia(トゥルーリア)を買収したことで、1億件を超える不動産データを保有するサイトに成長。全米の不動産検索サイト市場でNo.1のシェアを獲得するに至っています。
Zillowは自社データを活用し、AIで算出した不動産想定価格を提供しているのが特徴です。同社の算出した不動産価格は「アメリカにおける不動産取引の判断基準」といわれるほどの影響力を持っており、不動産推定価格「Zestimate」と呼ばれています。
Opendoor
引用:Opendoor
「Opendoor」は、2013年創業の米Opendoor Labs Incが公開した、アメリカ初のオンライン買取・再販のためのプラットフォームです。
AIを使って住宅価格を査定した後、現地調査を経て物件を買い取るビジネスモデルを展開しており、買取対象は1960年以降に建てられた1,100万〜5,500万円の一戸建てに限定しているのが特徴。
Opendoorの特徴は「決済スピードの速さ」「買い手への30日間キャッシュバックや2年間の修繕の保証」などが特徴です。
Redfin
引用:Redfin
2004年に設立された「Redfin」はアメリカの不動産情報検索できるサイトで、通常3%の広告掲載費用1%のてい手数料と、高い売却価格の販売実績が人気を集めています。
Redfinは、自社サイトに訪問したエンドユーザーのニーズをヒアリング。仲介を担当するエージェントを低価格な手数料で紹介することで、自社内で不動産売買が完結する仕組みを作りあげています。
Compass
引用:Compass
「Compass」は2012年に設立された、アメリカでも比較的新しい不動産テック系企業で、ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業からも融資を受けた実績があります。
Compassの主要事業は、不動産売買や賃貸に必要な情報を集約したプラットフォームの運営と、自社データをベースとした不動産仲介業です。
同社は1,700名以上のエージェントを抱えており、売買を希望するエンドユーザーはプラットフォーム上で、プロフィールや写真、動画、経歴、取引実績、評価などの幅広い情報を基にして、自分の希望に合ったエージェントを探せます。
日本へ参入可能性のある企業はあるのか?
日本では、不動産テック系サービスのなかでも、今後は業務支援系ツール・システムの開発が加速すると予測する声が聞かれます。
日本は今後も人口減少による深刻な労働不足が予測されています。そのような状況下では、マンパワーに依存する業務が多い不動産業は大きな影響を受けると懸念されるでしょう。
日本の不動産テックに業務支援を行うシステムが多いのも、そういった業界の喫緊の課題・ニーズを踏まえたゆえ。とはいえ、業務支援ツールに関しては日本特有の法規制や慣習が影響するため、アメリカのテック企業が参入してくるとは考えづらいでしょう。
ただし、アメリカのテック企業はデータ活用を基盤にしたサービスが多いので、今後日本でもデジタル化が進みデータ社会がより加速した場合は、そのノウハウをもったアメリカのサービスが参入してくる可能性は大いにあります。
なお、2023年現在の日本市場における不動産テック活用に向けた取り組み状況は、以下の記事でも解説しています。こちらも合わせてご参照ください。
関連記事:2023年現在の不動産テックへの取り組み状況|業界はどう変わっていくのか?
まとめ
アメリカの不動産テック市場は大いに盛り上がっており、中古住宅の取引件数の多さも相まって、住宅領域での利便性を向上させるサービスが多いのが現状です。
iBuyerにみられる印象的なテックサービスも存在しますが、法規制や慣習の違いから、直接への日本市場への到来は起こりづらいと考えられます。
一方で、アメリカの不動産テック企業がどういった視点を持ち、どのように不動産会社やエージェント、エンドユーザーの利便性を向上させているのかについては、学ぶべき点が多々あります。
そのため、定期的な情報収集を行う意義は大いにあるでしょう。
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